つるまうかく

群馬在住ヲタクのネット書斎

宇佐見りん「推し、燃ゆ」に見る”推し活動”のイマ

芥川賞を受賞した宇佐見りん「推し、燃ゆ」を読みました。
フォロワーさんが読んでいたり、声優でもミューレ3期生の宮沢小春さんが読んでいたりと、少し気になっていた本なのですが。
『ファン活動をするオタクの話』だということを知って、これは読んだ方が良いだろうと、急いで買いに行きました。

宮沢さんが『30分程で読める』と書いていましたが、私もそのぐらいで読んだのかな。
おそらく、これは”早く読める人の30分”なので、それ以上かかる人もいるかとは思いますが、それでもこの手の作品では短い方だと思います。

で、感想を書こうと思ったんですが、私が書こうとすると、あらすじをなぞる感じになり、ネタバレのオンパレードになってしまいそうだったんですよ。
なので、今回はそれは控えて、この作品が生まれた背景なんかを読み解いていこうと思います。

どちらかというと、『面白すぎるやろこれ』というよりは、センター試験の問題に出てきそうなタイプの作品ですね。

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「推しが炎上する」という引きの作品ということもあって、残念ながら明るい作品ではありません。
ただ、ひとつ言えるのは、リアルがしっかりと描かれているということ。
オタクでもなく、ファン活動もそこまでわからない一般の人にとっては、もしかすると現実味がないのかもしれません。
でも、そこに触れている人なら、必ず分かる。
「あ、これ、リアルだ」と。

激情的ではなく、むしろ淡々としている。
でも、その展開には、既視感ががあって。
そこに記されていたのは、紛うことなき、推し活動を行う私たちの姿でした。
作中ではファンのタイプを類型化して評する場面があって、それは本当に性格。
なので、本の世界に没入しながらも、自分はどのタイプだろう?と冷静に振り返りもしながら、読み進めたりもしました。

 

この作品のもう一つのテーマは、個人と人間関係です。
これはあまり感想で書く者でもないかなあと思います。
この部分をクローズアップして書いている書評も見ましたが、正直言って、私は主人公ほどではないけれども近い状態に陥っていた時期があるので、それを取り上げてどうだって言う気は全然なくてですね。
誰だってこういう所はあるよ、という言葉に留め置きたいなと思います。
決して変ではない。

最後まで読んで、この作品が『芥川賞』に何故選ばれたかが、少しわかった気がしました。
これは、ある意味で”現代版オタクの『蜘蛛の糸』”なんですよね。
だから、あの終わり方だし、この賞に選ばれたんだなと。

 

 

ハッピーな読後はお約束できません。
ただ、この作品を読んでほしい人が、何人か浮かんでいます。
そんな人に、おすすめです。