”へごちん”や”はっしー”の愛称で知られる、声優・大橋彩香さんのワンマンライブ『Our WINGS』に参加してきました。
東京では緊急事態宣言も発出され、多くのライブが中止となる中、千葉県は「まん延防止措置」で留まっていることもあって、自治体が提示した基準をきちんと守ったうえで、運営側も念入りに注意事項を知らせるなどの努力を重ねながら、奇跡的に開催にこぎつけた公演でした。
本人も「このライブができるのが奇跡」と言っていました。
12月に発売された3rdアルバム「WINGS」を引っ提げてのライブになるので、その曲をやるのはもちろんのこと、今のご時世もあるので、バラード中心の落ち着いた構成になるのかなと思っていました。
実際、へごちんサイドからも『クラップで楽しめる曲をやるよー』などの発信もありました。
ところがどっこい。
既にセットリストは公式レポートなどで公開されていますが、そこにあったのは、”大橋彩香”という魅力がふんだんに詰め込まれた、渾身の、攻めのオンステージでした。
最初に「今日はみんなが声を出せないから―」という話があり、「その分私が盛り上げますねー」という感じのMCがされた、と思います。
そこから繰り出されたのがすごかった。
これでもかというほど吹きあがる火柱の特殊効果。
凝り過ぎるほど凝り尽くしたレーザー演出。
世界観に一気に没入させるコンテンポラリダンスとの共演。
一糸乱れぬダンス。
圧巻でした。
炎の特効なんか、客席だって熱く感じるくらいでしたし、本人はもっと熱かったはずです。
そもそも危険だってある。
レーザー演出も、少し間違っただけで失敗してしまう。
様々な要素を重ね合わせた中での歌唱は独特の難しさがあるでしょうし、歌いながらのダンスなんか大変なはずなのに。
そして、”そこにお客さんがいる”ということも大事にする。
ステージ上を所狭しと、上手へ、下手へと移動しながら歌う。
ライブによってはあまりいい席だと言われないスタンド席に、トロッコで行く。
しかも2回も。
まるでお客さんが声を出せる環境にいるかのように、曲中でもお構いなしに、煽る、煽る。
もちろんクラップ曲も全力。
時にはへごちんが振り付けを先導して、左右に腕を振ったり、指揮者みたいにエア指揮棒を振るってリズムをとったりする。
そして、曲中にウェーブをする場面を盛り込む。
ファンにはたまらないドラムを披露する。
バックバンドの皆さんと”ツインドラム”でのコラボも。
そして、MCでは恒例(?)の”ふわふわしたTwitter投稿”コーナーも。
これらのことは、別にライブで必須なことではないんです。
でも。
へごちんは
「今回は自分がいっぱいわがままを言って、いろんなやりたいことをやらせてもらいましたー」
と、あっけらかんと、こともなげに、屈託のない笑顔で告げました。
『コロナだから今までのようなライブができない』というのは、あちこちで聞こえてくる話です。
元あった要素を間引いて、間引いて、なんとか実現する。
でも、へごちんは、それを今までになかったプラスアルファで埋めていた。
まさに、『攻め』のライブ。
しかも、それらのことは、真ん中で歌ってる本人が色々考えて動かないと実現できないもの。
それだけ、へごちんがこのライブに思いを詰め込んでいたんだなあということがわかって、その思いが、とても嬉しかったです。
ここまで触れてきませんでしたが、歌に関しても、パフォーマンスにしても、『素晴らしすぎる』という言葉でしか表せないようなものでした。
卓越した表現力はさらに磨きがかかり、感情を全部乗せ切った歌が空間を支配しました。
ダンスや歌唱時の表現も、気を抜くことがないレベルで研ぎ澄まされていて。
ステージさばきも、へごちんらしさは残しつつもうまい。
そして、難しい曲や、体力を使う曲、高音を使う曲をいくら歌ってもパワフルさが陰る気配が見えないほどの無尽蔵のスタミナを感じました。
本人もよくラジオで「体力は自慢」と言っていましたが、その証明がされた気がしました。
曲について触れると、それだけで長くなってしまうので短めにしますけど、特筆して書きたいものだけ。
ものすごく聞きたかった曲の一つ、「バカだなぁ」。
きっと歌われないと思っていたので、びっくりして、直立不動で聞いていました。
「Winding Road」「MASK」「HOWL」のWINGS暴れ曲三連発はまさに”バカだなぁ”という感じブチ上がりナンバー。
ここで一気に体力を持って行かれました。
そして、もう既に語り尽くされていると思いますが、「Sentimen-Truth」。
今思い出しても涙が出てくる。
曲に感情を乗せるへごちんらしい曲なのですが、今回のライブで更にとんでもない曲へと進化を遂げた、まさにそんな感じがします。
ラストのミラハ(ワガママMIRROR HEART)→ダイスキ。は定番にして完全燃焼の狼煙。
声が出せないのに、この充実感と満足感。
何かで本人が話していたと思うんですけど(記事かもしれません)、へごちんって、最初は歌を歌うのが好きじゃなかったはずなんですよ。
それが、ソロとしての活動も充実してきて、だんだん好きになってきたという話があって。
前回の2019年、パシフィコ横浜で行われた5周年ライブにも縁あって参加させていただいたのですが、この時の私の感想を振り返ると、この時点で『打ちのめされた』と書いてあります。
それだけ、へごちんの歌はすごかった。
ただ、この時点でのライブって、ある種のファンイベント的な要素もあって。
歌っているときの「大橋彩香さん」と、のときのほわほわした「へごちん」のギャップを愛らしいものだと思って堪能していた節も、あったんですね。
ただ、今回は違った。
たぶん、それは、色々なイベントが毎週あって、その中の一つにライブがあって、私たちもライブが当たり前に開催されるありがたさをその時は全然わかっていなかったし、ステージに立つ側や、運営サイドも、何かを成功させる立場ですから、私たちなんかよりはイベントを成功させることの重さはもちろんわかっているはずなのですが、その重さって、たぶん今と比べたらやっぱり、今のほうが重いんだろうなと、そう思うのです。
今回は、へごちんの意識みたいなものが、より色濃く見えて。
『めちゃくちゃ詰め込んだ』という過密スケジュールもあったと思うのですが、MCの配分とか、次のブロックへの導入とかがとても理路整然整えられていて。
へごちんが主体となってこのライブを進めているような感じがすごかったんですよね。
今回のライブをどう見せたいかが、より主体的になっていました。
2020年の一年のことが、あったんだと思うんです。
今の状況でライブをやるということに、どういう意味があって、自分にどんなことができるんだろうと。
『自分がみんなにできることは、歌や表現を通して、皆に笑顔を届けること』
これは、へごちん自身が過去のインタビューで言っているのですが、今回はそれをより強く感じていたんじゃないかと思いました。
『みんなから元気をもらえてよかったです』
と彼女は言った。
逆ですよね、元気をもらったのはこっちなのに。
『これからもみんなの翼になれるようにがんばりたい』
と彼女は言った。
そんなに背負わなくても、充分すぎるくらいのものをもらっているのに。
でも、その覚悟が、へごちんを、もう何回りも成長させているのかもしれません。
へごちんの大きな魅力の一つは、MCでもなんでも、どんな時でもにこやかにしていることです。
どんなにすごい歌唱をしても、MCではニコニコしてくれるし、なんなら歌いながら、客席にニコニコ笑顔で語りかけてくる。
それはまさに、幸せが幸せを呼ぶ「幸せスパイラル」を体現しているかのようで。
これから、ますます成長を重ねていくへごちんですが、きっとそれは、変わらない魅力として持ち続けてくれるでしょう。
色々な思いが溢れてまとまりませんが、本当に攻めのライブでしたし、でもへごちんは笑顔で、エネルギーと癒しを同時にもらった気がします。
そして、私自身も、前に向かって飛べるやる気をもらいました。
本当に、ありがとうございました。
関係する皆さんも、本当にありがとうございました。
次のライブも、絶対に行きたいです。