つるまうかく

群馬在住ヲタクのネット書斎

宮沢小春さんの初舞台と戦国送球バトルボールズ

ミュージックレイン所属の声優・宮沢小春さんが、ソフトボイルドさんの舞台『戦国送球~バトルボールズ~』に出演されるということで、初日(初回)と、大千秋楽(最終公演)を拝見してきました。
宮沢さんは、この作品が初めての舞台出演となります。

ソフトボイルドは、あの『初等教育ロイヤル』の脚本を手がけた加藤光大さんが旗揚げした演劇団体。
演技を志向する声優さんを起用することでも知られています。

今回の「戦国送球~バトルボールズ~」は、ハンドボールと殺陣を融合した挑戦的な演劇。
それに加えて”戦国タイムトラベル”の要素もあるなど、作品そのものについても語り甲斐がありすぎるのですが、そのあたり書き始めてしまうと終わらないので、全体的な感想は後日のブログに委ねたいと思います。

 

宮沢小春さん。
普段は「こはちゃん」と呼ばれていたりします。
「スフィア」や「TrySail」が所属する声優事務所『ミュージックレイン』(ミューレ)に3期生として所属。
これまでは主に、ゲームやアニメなどで展開しているプロジェクト「IDOLY PRIDE」の白石沙季役として活動してきました。
ミュージックレインの同期(全員で5人)による『ミュージックレイン3期生 新番組ベータ版』という番組を週替わりで担当しています。

beta.secondshot.jp

 

ミューレ3期生の中での宮沢さんの印象は、『礼儀正しく真面目ないい子』。
個性が目立ち、バラエティ豊かな性格の声優が多いミューレにあって、少し引いて落ち着いた佇まいと安心感、そしてたまに垣間見える天然な要素から『3期生の良心』というふうに捉えられることも多いです。
小説や漫画などの作品が好きで、静かに愛情を燃やす優しい子。

 

その中で決まった舞台出演。
これまでは”3期生”としてまとまって仕事をすることが多かった宮沢さん。
そこに単身の舞台のお仕事が入ってきたことには驚きでもあり。
また、この時期はIDOLY PRIDEのワンマンライブを控えていたこともあり、スケジュール面でも心配はありました。

ただ、ご本人の作品に対して真摯なスタイルを考えると、舞台に挑戦すること自体の違和感はないなとも思っていました。

 

宮沢さんの初舞台ということで、この時点で私も見に行くことにはしていましたが、それはある種応援的な要素が強く。
また、ライバル校のキャストということで、そこまで扱いが大きくはないのではという予想もありました。
しかし、様々な媒体で宮沢さんが初舞台への意気込みを語っていて、本人がどれだけ強い気持ちを持って舞台に望んでいるかが、だんだん伝わってきていました。

そして、今思うとあれがターニングポイントだったのかもしれないなという出来事が。
ここまで黒髪で通していた宮沢さんが、金髪のスタイルになった役の写真が公開されたのです。

実際にはウイッグだったわけですが、タイミングもあってちょっとした話題になり。
ただ、今振り返れば、これも役作りなんですよね。
役に向き合うための覚悟を感じました。

 

そして、初演。
宮沢さんの演じる役は、ライバル校のハンド部マネージャー、中井杏里。
クールでデータ分析等に長けていながら、情熱もしっかり兼ね備えていて人間味もある、そんな憎めない敵役の一人です。

冒頭、流れるテーマソングにあわせて踊るシーンから始まるのですが、そのパフォーマンスはまさに、これまで見てきたこはちゃんの面目躍如とでも言うべきパフォーマンスででした。
ただ、そこで気付いたんです。
こはちゃんがテーマソングを口ずさみながら踊っているのを。
流れてくる曲はちゃんとボーカルが入っているので、歌う必要はありません。
それでも、こはちゃんは、ちゃんと歌詞を覚えて、それをダンスに乗せていた。
この時点で、ライトな感覚で舞台を見に来た私は、こはちゃんがこの舞台に懸ける思いの強さを改めて感じました。

生の感想のほうが伝わると思うので、当日の私のもれ出たつぶやきでも。

同期の5人や、先輩にフォローされながらではなく、単身で慣れない世界に飛び込んだ。
心細いだろうから、ファンが駆けつけなければ。
そんな思いが、正直ありました。
でも。

宮沢小春は、そんなヤワじゃなかった。

千秋楽を見てから振り返ると、初回はやはり慣れない部分や、緊張があったと思います。
でも、舞台に上がって何かをやるって、それだけでもとんでもないことで。
宮沢さんは、大きなミスなく、ほぼ噛むこともなく、観客を心配させることもなく、、本当に初舞台とはとても思えないほど堂々としていました。

それと同時に、”中井杏里”というキャラクターの個性を借りて、どんどんと作品に溶け込んでいきました。
応援という心持ちから移行し、純粋に舞台を楽しんでいる自分がいました。

初回の終わりのアフタートークで、主宰・脚本・演出の加藤光大さんが言っていました。
「本当に初舞台とは思えない」と。
何でも吸収しようとする姿勢が評価されていたり、「本当にお芝居が好きなんだというのがわかった」という言葉を聞いて、とても嬉しかったですし、その言葉と会話の端々で、客演とかゲストとかで特別扱いをされていない、ミューレの3期生ではない”宮沢小春”単体として扱わていることも、改めて感じました。

アフトーでは、いつものスタイルに戻ったこはちゃんらしい振る舞いも見れて、そのギャップもまた善きでした。

 

私は「初回の初演」と「千穐楽のソワレ(最終回)」といういいサイクルでチケットを取れていたので、千穐楽を楽しみに待ちました。

 

千穐楽、最終回。
そこには、ますます杏里になった杏里がそこにいました。
あそこに居たのは宮沢小春さんというより、中井杏里だった。
ハンドボールの強豪にいて、将来を嘱望されて、でも怪我で競技を諦めざるを得なくてマネージャーに転身して。
経験と努力に裏打ちされたコーチ力と、時には勝利のために大胆な行動に出たりもする情熱と、チームの士気や団結力を高め、安土桃山高校の勝利を何より大事に考える女の子の姿が、そこにはありました

千穐楽はS席を買ったので、こはちゃんの演技がより近くで見ることができました。
暗転したときにどう動いてるかとか、近くでないと見えづらい時の演技をどうしているかとか。
舞台は自分にスポットライトが当たらないとき、どう動いているかのとか。

のちに、加藤光大さんも「オフ演技」のことを話されているんですけど、こはちゃんは、確かに、ずっと演じていたんですよ。
自分の番じゃないときも、舞台上の見える位置にいる時は、ずっと杏里のままだった。

千穐楽の深夜に主催の加藤光大さんがやっていたLINE LIVE
そこで語られていた”宮沢小春”像。
「『オフ演技』をずっとやっていて、この子お芝居が大好きなんだとわかった」と。
要するに、自分のセリフや決められた動きがある時は「オン」で、そうでないけど舞台上にいるときがオフ。
演じることが心から好きな役者は、舞台上に入る時はずっと、演技をしているんだそうです。
こはちゃんは、その”演じることが好きな子”でした。

そして、もう一つ、大事なことをおっしゃっていて。
この話を聞いて、この切り口でこのブログを書くのも、ちょっとおこがましいなと思ってしまったのですが。

こはちゃんのキャスティングについて、正直なところ、声優であることや、ミューレの若手ということでキャスティングされたのだと思っていました。
舞台はあらゆるファンに注目してもらって観客を集めるというのも必要になってくるので、そういった目論見もあったのかもしれません。
でも、舞台に出ているときのこはちゃんは、声優でも、アイドルでもなくて。
まさに”役者”だったんですよ。
光大さんのこの言葉を聞いて、思わず涙腺が緩くなってしまいました。


『ちゃんとマネージャーしてたよ。
 ”初舞台”じゃなくて、ちゃんとやってました』

 

もはや、初舞台であることは事実でしかなくて、一人の役者として評価されていたことが嬉しいですし、そうして評価してくれた舞台の座組の皆さんも素敵だなと思いました。

それだけの「プロフェッショナル」を発揮したこはちゃんですが、舞台を終わってみれば一人の22歳に戻ります。
本当にハードスケジュールだったと思いますし、大変だったと思います。
たった一人の戦い。
背負うものも重かったでしょう。
ただ、そのなかで、楽しんで舞台に向き合えていたと思います。
最後のあいさつの場面を見て、そんなことを感じました。

本当に、お疲れさまでした。
この先も、とても楽しみです。

 

そんなこはちゃんに期待することですが、やっぱり、お芝居やってほしいです。
声優として、いろいろな活動がどんどん出てくると思います。
場合によってはアーティスト活動も始まるかもしれない。
でも、その中で、お芝居とか、舞台とか、朗読劇とか。
そういった表現の道への歩みも進めてほしいなと思いました。
だって、こんな素敵な演劇ができるんですから。
これが一回こっきりになってしまうのはもったいないし、そうなったら悔しいです。
もっともっと、いろいろな顔のこはちゃんを見てみたい。
その魅力を多くの人に知ってほしい、と思っています。

お芝居も続けている先輩もいることですし、そういったお仕事が継続できるといいですね。

 

 

まとまりきりませんが、戦国送球における宮沢小春さん部分の感想は、こちらで締めたいと思います。
とても素敵な舞台でした!


本編や、さらに書きたいことはもっと他にあるので、それはまた後日に。