東京タワー~朗読劇と、改めての原作を読んで~
先日、TOKYO FMホールで開催された朗読劇「東京タワー~ボクとオカンと、時々オトン~」に行きました。
名だたる声優さんがキャストとして朗読するのも魅力の一つとして、そもそもの部分で、リリー・フランキーさんの「東京タワー」という作品がとても好きで。
本当に素晴らしい朗読劇でした。
まず触れたいのは、観客にとっての「わかりやすさ」。
演技や表現の素晴らしさを味わえるのはどの朗読劇でも同じですが、今回の朗読劇では、原作を知らない人にもとてもわかりやすかったです。
エピソードの選び方でもそうですし、スクリーンや音楽を使った演出もそう。
更に、キャストさんの力が加わって、至高の物語が眼前で展開されていきました。
今回は、主人公である「ボク」と地の文を梶裕貴さんが担当しました。
全体の7~8割を、梶さんが読んでいたのではないでしょうか。
朗読劇の雰囲気を一人でコントロールする需要な役柄を、情感や想い、物語のニュアンスを巧みに表現していました。
観客に「味わってもらいたい」という意識が伝わってきた、とても良い朗読でした。
そして、もうひとり外せないのは「オカン」、松本梨香さんです。
リリー・フランキーさんが「この本はオカンの本です」というくらい、オカンの物語である、東京タワー。
素晴らしいとか、よく演じられているなどの言葉すらおこがましくて、ステージ上にいたのは、もはやリリーさんのオカンでした。
置鮎龍太郎さんの「オトン」も、大変味のあるオトンでした。
主人公役や格好いいキャラクターのイメージが強い置鮎さんが、こういった父親像を演じるのは、個人的にはとても意外で、より凄みを感じました。
セリフ数は多くないものの、ご自身が福岡出身ということもあり、ナチュラルなオトン像がとてもよかったです。
「彼女」「地元の友人」は、前者は原作ではここまでクローズアップされておらず、後者はいくつかの人物の要素が合わさった形になっているなど、この朗読劇にあわせてアレンジされた役柄でした。
「彼女」を演じた雨宮天さんは、少ない場面ではありながらも印象的な言い回しを担うことが多く、朗読劇の雰囲気にしっかり溶け込み、その場面をしっかりと印象付けていました。
余談ですが、終了後のトークでは雨宮さんらしい「声優に憧れて声優になった」話題で会場を盛り上げていたのが、彼女らしさも際立ってよかったです。
「地元の友人」を演じた代永翼さんは、複数の役割が合わさった形で一番のオリジナルキャラでもあり、その苦労はあったかなと思いますが、アグレッシブな演技で場面にアクセントをしっかり付けていたと思います。
「語り部」の塩崎こうせいさん、吉田智美さんは、このエピソードやオカンに関わる様々な需要人物を適切な温度感で演じ分けるという重要な役割。
アンサンブル的な要素はありながらも、大車輪の大活躍でした。
本当に素晴らしい朗読劇でした。
劇というか舞台に近く、生のお芝居を堪能させていただきました。
どこかの青い人よろしく「声優さんってすげー!」は、客席側から投げかけたい感想でした。
朗読劇の後、改めて「東京タワー」の原作を読み直しました。
2005年に買ってすぐ読んでいるはずですが、私が持っているハードカバーでも「第7刷」。
人気が如実にわかります。
当時もボロ泣きした記憶は今でもありますが、当時の私は、まだ20歳にもなっていませんでした。
それから、20年が経ちました。
今は2025年ですからね。
当然、感じ方も変わってくる。
改めて読んで、この出来事の重さは、比喩なしに100倍くらいになっていました。
朗読劇を見て(聞いて)、改めて小説を読み直して。
そこには深い感動がある。
・・・のだけれど、そこで終わっていいものでもないなということを、強く感じました。
なぜなら、これは、自分事だから。
自分の話は外に語るようなものではないけれども、この2日間で感じた思いを大事にして、過ごしていきたいなと、より強く思いました。
貴重な機会を、ありがとうございました。