つるまうかく

群馬在住ヲタクのネット書斎

秋の夜長に思ふこと~朗読劇感想

朗読劇「三つの愛と、厄災」17日夜の部(千秋楽)を観劇してきました。

 

このご時世・・・ということを過度に強調したいわけではありませんが、やはりイベント事にふらっと行ける状況ではなく。
今回も色々考えたうえで、この回だけ参加させていただきました。

誕生日の『夏川椎菜のCultureZ』で、今まで語っていなかった希望として「朗読劇を主催したい」と発言した夏川さん。
その思いに押されて、9月に出演した「彼女が好きなものはホモであって僕ではない(かのホモ)」を拝見しました。
本当は現地に行く予定でしたが、ワクチンの副反応明けだったり、コロナの状況が芳しくなかったりなどがあり、現地で体感することは叶いませんでした。
そのこともあり、ナンちゃんの朗読劇を生で聞きたいという思いが最初にありました。

あわせて、今回の朗読劇は、色々な声優さんが回ごとに役を演じられるのですが、最終回に鶴野有紗さんが出演されることを知りました。
私自身、そこまで存じ上げてはいない方ですが、身近に熱心に応援されているファンの方がいたり、「すばこ舎」の中の人でもあるヒヨコ群員さんがとてもプッシュされていたこともあって、朗読劇というものへの思い入れをこちらも知っていて。
そんな方が、どんな演技をするのかが気になってもいたんですよね。
朗読劇に一家言ある二人が舞台上で絡み合ったらどうなるだろう。
そんなワクワク感が生まれてしまい、現地で見ることにしました。

更にうれしいことに、共演の中に阿座上洋平さんがいまして。
この方、何と群馬県出身の声優さんなんですよね。
しかも、ここのところ「白い砂のアクアトープ」で屋嘉間志空也というメインの登場人物の一人を演じていて。
阿座上さんも見られるのはうれしいなあと思いながら、色々な思惑が絡み合って現地に馳せ参じました。

 

物語は、菊池寛「マスク」、堀辰雄風立ちぬ」、太宰治パンドラの匣」、坂口安吾の「夜長姫と耳男」を組み合わせた、厄災(パンデミック)をテーマとしたもの。
大正から昭和気にかけての文豪の作品になるので、くどさはあまりないものの、物語の中に人の本音が隠されているものが多くて。
テーマはまさに、いま私たちが直面している”病気のパンデミック”なんですけど、そこに描かれているのって、結局は人間模様なんですよね。
それゆえに、やっぱり心が、本音や本心が大事だよなあと感じながら、本質を考えることの大切さを、この朗読劇を通して改めて考えさせられました。

最後のクライマックスである「夜長姫と耳男」は、愛とか、好きになるとはどういうことかについて突き詰める部分もあって。
それは不思議と、”推し事”と重ねてしまいました、自分は。
夜長姫の
「好きなものは咒(のろ)うか殺すか争うかしなければならないのよ。」
という最後の台詞が、今も自分の中ですとんと落ちすぎて、消化されてくれません。
もちろん、二つ目は実際はしないですけれども、概念としてはものすごく腑に落ちるかもしれない。

 

キャストさんの話を、僭越ながら。
ナンちゃんに関しては、演技力の高さもさることながら、役への入り込み方がすごかったです。
今回、男性役を演じることが多かったのもあって、基本的には服装も様々な姿勢もメンズスタイル。
前半はそれを抑えながら丁寧に演じていて、夜長姫の『耳男』で爆発させる。
あそこにはナンちゃんはいなくて、役者・夏川椎菜がいて、さらに言ってしまえば耳男がいました。
ご本人もラジオで「難しい」とこぼしていて、実際女性が演じるにはそうだろうと思うんですけれども、見事にそこに現界できていました。

鶴野さん。
演技を見るのも、意識してみるのも今回が初めてで、ある意味未知数でした。
朗読が始まって気付いたことが二つあって。
意識としても、演じ方にしても、とても舞台劇に合致しているなということ。
そしてもう一つが、この朗読に向けて、相当な努力を積み重ねてきたなということ。
演技がしっかり安定しているうえに、守りに入っていないんです、攻めてるんです。
この一回だけのキャスティングだったこともあってか、ものすごく気合を入れてステージにやっているのが感じられました。
経歴とか、色々な環境の違いだとか、そういったバックボーンはわかる人だけが考えればいい話であって。
ステージ上の演技だけでいえば、ナンちゃんとまともにタイマンを張っていたんです。
これは本当にすごいなと思いました。
個人的には、「風立ちぬ」の節子の演技が好きでした。

ちなみに、阿座上洋平さんは、ヘタレキャラである”やかましくうやっぽさ”は一切ありませんでした。
終始しっかりしていて格好良かったですね。

 

久しぶりに生の演技を聞けたな、という感じでした。
その人の演技や、役者らしさを見れた気がして。
やっぱり、朗読劇っていいですね。

 


あと、朗読劇とは切り離して考えたほうがいいんだと思うのですが、朗読が終わったあと、緊張が解けて少しラフになるナンちゃんと鶴野さんの姿にはほっこりしました。
また、夏川さんファンでもある鶴野さん、ちゃんと思いをナンちゃんに伝えられたそうです。
おめでとうございました。