つるまうかく

群馬在住ヲタクのネット書斎

8か月ぶりにイベント(秒速5センチメートル朗読劇)に行ってきた話

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久しぶりに、イベントで東京に行ってきました。
前回の参加イベントは2月のスフィア全曲ライブでしたから、じつに8か月ぶり、ということになります。

今回行ったのは、朗読劇”恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』”。
様々なイベントがちらほら復活して開催される中、やはりコロナのリスクがあってなかなか一歩が踏み出せなかったところ、私が大好きな「秒速5センチメートル」が題材ということで、重い腰を上げて群馬から参戦しました。

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思えば、まだ新海誠監督が世間に発見されていなかった2007年。
近場でも上映されているのは東京の映画館くらいで。
人見知りをこじらせていて、一人で出かけるのも恐怖との戦いだった私。
おっかなびっくり一人上京して、ボロ泣きして帰ってきたのがまさにこの映画「秒速5センチメートル」でした。

鈍行が新幹線に変わりましたが。
おっかなびっくりの指し示すところは変わりましたが。
まるで13年前と同じような心持ちで、上京することになりました。


今回私は、24日の12時と、16時の部を見させていただきました。
12時の回は、貴樹役に梶裕貴さん、明里を福原遥さん、花苗を佐倉綾音さんが。
16時の回は、貴樹を黒羽麻璃央さん、明里を内田真礼さん、花苗を生駒里奈さんが務められました。


原作の映画も大好きですし、小説版も後になって読みました。
その意味では、原作ファン、と言えると思います。
ただ、今になってみると、秒速5センチメートルがどんな話かを知らない人も多い。
キャストの年齢で見ても、佐倉綾音さんが13歳、福原遥さんに至っては10歳にもなっていない頃の作品です。
原作通りに読み解けというほうが難しい。
だから、原作ファンにとって、それがどのように描写されるのか、楽しみでもあり、一つ大事な要素でもありました。

結果、そんなに心配することはありませんでした。
原作で話されていた台詞はほぼほぼそのまま使われていたはずです。
多少のアレンジやアドリブはありながらも、崩しては綺麗さが失われてしまうところはそのままで、原作ファンにとってもありがたい配慮でした。


朗読劇ということで、スタンドマイクがあって、そこに代わる代わる入って朗読する形かと思っていました。
ただ、明里役の福原遥さんが、まるでドラマかのような感じで、かなりの動きを付けて演じ始めたとき、察しました。
「あ、これは、朗読劇と銘打たれた舞台なのだ」と。

朗読劇には、これがあるんです。
ずるい。
ずるいけど、それをやられてしまうと、もう勝てない。

 

具体的な内容については触れません。
各回の雑感だけ。

1回目。
大好きな作品とはいっても、作品に最後にちゃんと触れたのはかなり前のこと。
その記憶を取り戻すように、本当に食い入るように舞台に目を向け、耳をそばだてて、食い入るように前を見つめました。

貴樹を演じた梶君。
それぞれの年齢を、年相応の声色で演じる。
声優としては基礎なのかもしれませんが、一つのセリフの中で、大人貴樹と子ども貴樹を一気に声色を変えて演じていたのは、すごかったです。

福原遥さんは、実際に拝見するのは初めてでした。
演技の傾向としては、なんとなく伊藤美来さんを彷彿とさせるような、清涼感と”天使感”。
大人明里の演技も堂々としていたので吃驚したんですが、彼女、まだ22歳なんですね。
しっかり、3世代の明里を演じられていました。
そして、最初に書いたように、声だけでなく全身を使ったお芝居もとてもよかった。
ステージ上には、ちゃんと明里がいました。

あやねるはあやねるでした。
これだけ書くととても雑ですが、花苗というキャラクターを自分なりに解釈したんだなというのがよくわかりました。
第2部のコスモナウトって、その話の置き所としても、とても難しいパートなんですよね。
その難しい部分を、あやねるらしさと柔軟さで、一つの答えを出した。
役者だなあと思いました。

2回目。
お芝居は、キャストの解釈と演技の方向性によって、色が変わります。
じつは、その解釈と色付けは、個人的にはこの2回目のほうが好みでした。
勿論、1回目も素敵だったし、2巡目だったからよりよく見れた部分もあります。
ただ、この組み合わせ、個人的に好きでした。

黒羽麻璃央さん、正直今回初めて知った方でした。
素晴らしかった。
おそらく舞台中心の方だと思うんですけど、秒速5センチメートルの、おそらく映画原作でしょうか、それを何度も何度も見込んで、遠野貴樹をしっかり作り上げてきたんだな、というのがとても感じられました。

まれいたその明里は、中学生時代は若干あざとい。
活発な明里という感じでした。
ただ、それが良いフックになって、大人明里がとても大人びて見えました。
いい明里でした。

花苗役を務めたのは元乃木坂46生駒里奈さん。
乃木坂は疎いので、正直名前しか存じ上げていませんでした。
ある意味、必死さを感じさせるような、全身でのアグレッシブな演技。
それが、花苗という人物に、見事にハマっていて。
とても存在感がありました。

2回目、泣かないと思っていたんですよ。
1回目も何とかこらえたので。

ただ、第3話に入ってからの、キャスト陣の抑揚の聞いた演技にじわじわとやられて。
最後の場面で、こらえきれなくなりました。

 

映画を見た10代の時。
秒速5センチメートル」という作品は、まぎれもなく”泣き映画”でした。
その後、歳を重ねて、社会に出て働くようになって。
少し違う見方もできるようになりましたが、やはりその印象は変わらなくて。

ただ、今回の朗読劇を経て、少し印象が変わったんですよね。
これは、ある意味、前を向いてもっと進んでいく話なんじゃないか、って。

色々な気付きがありました。
秒速5センチメートル、2007年の作品ですよ。
それが2020年の、令和の今、またリバイバルのように題材になって。
でも、まったく、色褪せずに。
解釈一つで、新たな視点さえもたらしてくれた気がしています。

秒速5センチメートルで、できることを前に進めていこうと、そう思いました。