京都の和菓子屋を舞台にしたアニメ、「であいもん」。
非現実的な魔法が出てくるわけもなく、そういった意味の派手さはありませんが、物語が丁寧に描かれており、見ていて色々な気付きがある作品です。
私の地域では地上波放送がなくネット配信なので、少し送れての視聴になっていますが、毎週楽しみに見ています。
第4話で、ストンと落ちるセリフに出会ったので、ここで紹介してみたいと思います。
主人公の元恋人が、分かれてもなお主人公のことを気にかけている様子を、こんな風に言葉に表していました。
「本気でやろうとしている姿を見ちゃったら、それを見届けてやりたくなったの。
『好き』とか『嫌い』とかで、はっきりわかれればいいけど・・・
”知れば知るほど、そんな簡単に片付かない関係”ってのもあるよね。
血はつながってなくても。」
(「であいもん」より、松風佳乃子)
これは、かつての恋人という間柄として出てきた台詞でした。
個々だけ切り出すと、本来のやり取りの機微を若干損ねてしまうので、お時間ある方はであいもんの作品そのものを見ていただきたいところではありますが。
こんな感じで思うこと、あるなあと。
すべての物事を、好き嫌いで考えられたら、たぶん楽だと思うんです。
でも、そんなに単純じゃなくて。
人は相手を知れば知るほど、他人事じゃなくなるもの。
情が移ってくるものなんだと思うんです。
推し事なんかもそうで。
応援している人を「うちの身内が」的に言う人もいたり、かつて応援していた人が未だ気になる人もいたりする。
好き嫌いで考えたりすると、ちょっとおかしいやろと思われがちなんですが、やっぱりある程度知ってしまった人って、ここでいう”簡単に片付かない関係”になると思うんですよね。
他にも、”腐れ縁”だったり、嫌いと思いながら意識してしまう人だったり。
場合によっては、本心から遠ざけたいケースもあったりしますけど。
どんな分野でも、”簡単に片付かない”関係って、ある気がします。
そのあたりを表す言葉にはめったにであえないものですが、「であいもん」は、その不確かな関係性を言葉に起こしてくれました。
人と人とのつながりを大事にしている作品だからこそかな、と思っていたりします。
物事の定義は、辞書を引いてみたり、ネットで調べてみたりと、どうしてもレッテルを貼ってしまいがちですが。
こうして、ゼロかイチか、好きか嫌いかだけでは判断できないような微妙で繊細な要素は、少し心の余裕を持ちながら、丁寧に汲み取っていきたいものです。